チェックリスト意味論とは

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20世紀の意味論の中心となったのが、非単一階層的アプローチ(two-level approach)だ。ここでは言語の意味はもっぱら語彙的知識(lexical knowledge)から構成されると考え、背景的な情報となる百科事典的知識(encyclopedic knowledge)とは区別する立場を取っている。

語彙的知識を探求する方法は様々だが、とりわけ20世紀中盤に主流となったのがチェックリスト意味論(checklist theory of meaning)である。

まず、チェックリスト意味論では、語句の意味はいくつかの必要十分条件に還元できるとする。それら要素をすべて満たすことで「意味」が形成される。そのため、意味の境界線は明確となる。

例えば、girlという語句の意味を考えてみよう。チェックリスト意味論によれば、語句girlは[+human] [-male] [-adult]の必要十分条件がそろった集合体と考える。

また、チェックリスト意味論を支える構造主義的発想では、ある意味はその構造の中で相対的な立場を照らすことができる。先のgirlであれば、[human] [male] [adult]の三要素のパラメーターを調整することで、他の対立する語句の存在を見出す。

  • man: [+human] [+male] [+adult]
  • woman: [+human] [-male] [+adult]
  • boy: [+human] [+male] [-adult]
  • girl: [+human] [-male] [-adult]

(出典: 松本(2003: 19)より)

語句の意味とは、これら示唆的特徴(distinctive feature)の集合体と考えられる。言い換えれば、意味は言語的な問題であり、言語主体の認知や経験は介在されない。

しかし、その後の言語学の発達と共に、チェックリスト意味論の問題点も浮かび上がってくる。

1つはタクソノミーの問題だ。タクソノミーは意味の階層構造を示す概念で、crow(カラス)はbird(鳥)の下位構造であり、bird(鳥)はcreature(生物)の下位構造となる。

だが、タクソノミーは明確に線引できないことが多い。例えば、松本(2003)はchairとfurnitureの例を挙げている。chairはfurnitureの下位語だが、beach chairはfurnitureのタクソノミーに分類されない。これはfurnitureは部屋の中に置かれるものと考えられるからだが、するとchairはfurnitureではないと言わざるを得ない。

また、家族的類似性のように、必要十分条件を共有していなくても、個々の事例の共通点から意味が抽出されることもある。ボードゲームやカードゲームは異なる種類のものだが、それらは「ゲーム」という意味で一括りにすることができる。

このように、チェックリスト意味論のような機械的分類では、我々の世界を構成する意味を説明するには不十分なことがわかってきた。そこで登場するのが認知言語学的意味観となる。

 

// 参考文献

松本曜. (2003). 認知意味論 シリーズ認知言語学入門 (第 3 巻).

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