メタファー(隠喩)とは何か

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メタファー(metaphor: 隠喩)とは、類似性に基づく比喩表現である。ある具体的な事象と、認知上の共通点を見いだせる別の事象を比較し、2つの共通性からスキーマを形成する。

「月見うどん」を例にとって考えてみよう。月見うどんはうどんに生卵がトッピングされた料理であり、天体としての月がうどん内に入っているわけでも、月を見ながら食べる習慣があるわけでもない。

それでも月見うどんと呼ばれる理由は、たまごと月の類似性が見いだせるからである。我々はたまご入りのうどんを見た時、たまごの黄身が月のように黄色く輝いてることに気がつく。そこから「丸く黄色く輝くモノ」という類似性が抽出され、たまごを月と喩える結果、「月見うどん」と表現するのだ。

このように、メタファーは類似性に基づく比喩であるが、類似性には対象レベル関係レベルの2つがあると言われる。対象レベルはモノの属性を表す。英語のchickenに「臆病者」の意味があるのは、すぐに逃げ出すニワトリの属性・特性が抽出されたものだ。関係レベルはモノとモノの関係性である。chickenは別言語で「プレイボーイ」を意味するのは、雄のニワトリが複数の雌ニワトリと共に飼われる関係性によるものだろう。

メタファーは日常の言語表現で頻繁に使われるため、比喩らしさが失われ、本来の意味のように思われるものがある。例えば、pupilは「児童」と「瞳」の両方で使われる単語だが、元の意味は児童であり、瞳としてのpupilはメタファーであると考えられる。しかし、瞳の意味が繰り返し使われた結果、死んだ比喩(dead metaphor)となり、用例として定着した表現となった。

メタファーは認知言語学で言うカテゴリー化の特徴を備えているため、プロトタイプを中心に「喩えられるもの」の判断が行われる。先のpupilの例なら、プロトタイプとしての「児童」と周辺事例の「瞳」には、おそらくはじめは大きな距離感があった。しかし、「瞳」の意味が繰り返し使われることで、pupilの持つスキーマに変化が生じ、「瞳」がプロトタイプ「児童」へ距離感を縮めていったと考えられる。

最後に、メタファーの単方向性(unidirectionality)について触れておきたい。メタファーで起こる意味の変化や拡張は、往々にして一方向的に発生する。例えば、英語の前置詞inとonはもともと空間的なイメージ・スキーマを形成できるが、それが意味拡張して時間表現にも用いられる。前置詞ではこのような空間から時間への拡張が見られるが、逆はない。双方向的に起こるのは、例えばシネクドキなど、別の種類の比喩である。

メタファーは語句レベルだけでなく、構文レベルにも応用できる重要概念だ。詳細は別のエントリーで議論していきたい。

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