多義性とネットワーク・モデル

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ある語句を辞書で調べると、たいてい2つ以上の意味が掲載されている。それらの意味は場面によって適切に使い分けられることで、話し手と聞き手が1つの語句の意味を同定しコミュニケーションを取る。

このように、言語要素の意味は状況に応じて変化する弾性(semantic flexibiity)を持っており、1つの単語が複数の意味に対応することを多義性(polysemy)と呼ぶ。一般に、使用頻度が高い語句ほど多義的である。

さて、多義的な語句には、異なる意味がバラバラに付与されるわけではない。そこには何らかのつながりを観察することができ、その意味を統括するフレームワークがネットワーク・モデル(schematic network model)だ。ネットワーク・モデルは認知言語学の基本的な考え方である、スキーマ、プロトタイプ、周辺事例から成るトライアングルで示される。

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ラネカーは例として、英単語ringの多義性を、ネットワーク・モデルを使って説明している。ラネカーによれば、ringのスキーマは「輪状の装飾物」、プロトタイプは「指につける輪状の装飾物」、そして周辺事例として「鼻につける輪状の装飾物」となる。周辺事例はスキーマを共有していることを前提に、プロトタイプに近いもの、遠いものなど、様々な例が段階的に所属する。

ここで、プロトタイプや周辺事例は、スキーマの意味を詳細化(elaboration)あるいは具体化(instantiation)したものと表現する。逆に、スキーマはプロトタイプや周辺事例の抽象化(abstraction)である。

また、プロトタイプや周辺事例は、別の概念のスキーマになることがあり得る。このような階層性がある場合、より上位のスキーマは全体を統括するスーパー・スキーマ(super schema)と呼ばれる。

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さて、多義性と呼ばれる概念には、広く次の3つが存在する。

  • 同音異義語(homonym): 別の2つの語が偶然同じ音形を有している
  • 多義語(polysemous word): 1つの音形に、関連ある複数の意味が対応
  • 単義語(monosemous word): 1つの意味を持つ語

特に、多義語においてはメタファー、集合体モデル、イメージ・スキーマ変換など、語句によって異なる理論的背景を持つ。これらは別エントリーにて議論していきたい。

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