プロトタイプ効果と理想化認知モデル

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認知言語学のカテゴリー観では、典型的成員であるプロトタイプの存在を認め、プロトタイプに一致しないがカテゴリーに属する周辺的事例を段階的に設けている。このような段階性によって、我々がそのカテゴリー「らしさ」を判断できることをプロトタイプ効果(prototype effects)と呼ぶ。

例えば、「鳥」という概念のプロトタイプはスズメやカラスなどの「羽とクチバシがあり、空を飛ぶ生き物」だろう。スズメはまさしく「鳥」の概念にピタリ合う生き物だが、ペンギンは「鳥らしさ」に欠ける周辺的事例である。

このような、プロトタイプになるために必要な要素を典型的条件(typicality conditions)という。典型的条件を満たす度合いが大きいほど、その事例はプロトタイプ的であると言える。

また、プロトタイプ効果の発揮には、人間の背景知識が寄与することがある。

例として「童貞」という概念を考えてみよう。童貞は「性体験をまだ行っていない男性」を意味する。しかし、5歳の子供を「童貞」と表現することはあまりないだろう。なぜなら、童貞には「責任を持って恋愛・結婚ができる年齢になったら、1回や2回の性体験は済ませておくことが、良い男の条件だ」という社会通念(?)がある。

このような背景知識のもとに「童貞」は使用されるので、たとえ「性体験をまだ行っていない男性」の条件を満たしていても、5歳児を童貞呼ばわりすることには違和感を覚えるのだ。

以上のように、カテゴリーが背景知識をベースに構成されているとする考え方を理想化認知モデル(Idealized Cognitive Model: ICM)と呼ぶ。すべてのカテゴリーに背景知識が適用されているとは断言できないものの、一定の割合で影響を及ぼしていることは間違いないだろう。

これは言語習得でも同様だ。ある多義的な用法を持つ語句のプロトタイプ的な意味を理解するには、その背景知識が学習不可の軽減に役立つだろう。この辺りはまた別のエントリーで論じていきたい。

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