トローゴットの主観化

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ラネカーの主体化が言語主体の概念化の過程に注目したのに対し、トローゴットはこれを解釈による意味変化と考える。ラネカーと区別するため、トローゴットのsubjectificationは主観化と呼ばれることがある。

トローゴットによれば、主観化は意味に新しい解釈が加わることで、はじめの意味が消え、新しい意味が定着する段階的な現象である。

sinceを例にとって考えてみよう。sinceは「〜以来」のような時間関係、「〜のため」のような因果関係、そしてどちらにも取れる表現が可能である。

  1. I have done quite a bit of writing since we last met. (時間関係)
  2. Since Susan left him, John has been very miseable. (時間関係・因果関係)
  3. Since you are so angry, there is no point in talking with you. (因果関係)

(出典: Traugott and Konig, 1991: 194-195)

sinceは従来、文章1のように時間関係を表していたが、そこに因果関係の意味が加わることで、文章2の解釈が可能となった。

次に、sinceが時間関係・因果関係から、従来の「時間関係」に漂白化(bleach)されることで、因果関係のみに意味変化する。その背後では、言語主体による「時間的な関係があるということは、そこに何らかの因果関係もあるだろう」といった解釈が伴ったからであり、トローゴットの定義ではその過程が主体化(subjectification)となる。

これを図に表すと、次のようになる。

since

(中村(2004: 24)より筆者作成)

このように、トローゴットの主観化では、言語主体の解釈・読み込みによる意味変化である。この点で、希薄化によって意味が減少していくと考えるラネカーの主体化とは、異なるものと考えられる。

 

// 参考文献

Traugott, E. C., & König, E. (1991). The semantics-pragmatics of grammaticalization revisited. Approaches to grammaticalization, 1, 189-218.

中村芳久. (2004). 認知文法論 Ⅱ. M]. 東京: 大修館書店.

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